問題
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、冷凍の原理および冷凍サイクルについて正しいものはどれか。
| イ. | 流動する冷媒1kgの中に含まれるエネルギーを比エンタルピーといい、その単位は、(kJ/kg)で表す。冷凍装置における冷凍能力は、各機器への熱の出入り前後の比エンタルピーがわかれば計算することができる。 | ||
| ロ. | 吸収冷凍機では、圧縮機を使用せずに、吸収器、発生器(再生器)、溶液ポンプなどを用いて冷媒を循環させ、冷熱を得る。 | ||
| ハ. | 実際の冷凍サイクルでは、常に理論断熱圧縮動力以上の圧縮動力を必要とし、圧縮機の機械的損失も伴う。そのため、蒸発温度と凝縮温度などの運転条件が同じであっても、理論冷凍サイクルの成績係数に比べ、実際の装置における冷凍サイクルの成績係数は小さくなる。 | ||
| ニ. | 理論ヒートポンプサイクルでは、圧縮機で理論断熱圧縮動力を消費して、この圧縮動力に相当する熱と蒸発器で取り入れた熱とが冷媒に加わって凝縮負荷となり、凝縮器から放出される熱を利用する。 |
| 1. | イ、ロ | ||
| 2. | イ、ハ | ||
| 3. | ロ、ハ | ||
| 4. | ロ、ニ | ||
| 5. | ロ、ハ、ニ |
回答
正解は(5)
イ.流動する冷媒1kgの中に含まれるエネルギーを比エンタルピーといい、その単位は、(kJ/kg)で表す。冷凍装置における冷凍能力は、各機器への熱の出入り前後の比エンタルピーがわかれば計算することができる。
→不適当
冷凍装置の冷凍能力は、蒸発器出入口における冷媒の比エンタルピー差に冷媒循環量を乗じて求めることができます。問題文では「熱の出入り前後の比エンタルピー」だけがわかれば求められるとあるため、この選択肢は誤りです。
ロ.吸収冷凍機では、圧縮機を使用せずに、吸収器、発生器(再生器)、溶液ポンプなどを用いて冷媒を循環させ、冷熱を得る。
→正しい
吸収冷凍機は、吸収器、発生器(再生器)、溶液ポンプなどで冷媒を循環させて、冷熱を得ることができます。
蒸気圧縮冷凍機で使われている「圧縮機」を用いないため、動作時の振動や騒音が少ないというメリットがあります。
ヘタ・レイ吸収式冷凍機に設置されている機器(吸収器など)と、運転時の振動や騒音が少ないという特徴は必ず覚えておきましょう。
ハ.実際の冷凍サイクルでは、常に理論断熱圧縮動力以上の圧縮動力を必要とし、圧縮機の機械的損失も伴う。そのため、蒸発温度と凝縮温度などの運転条件が同じであっても、理論冷凍サイクルの成績係数に比べ、実際の装置における冷凍サイクルの成績係数は小さくなる。
→正しい
成績係数(COP)はエネルギー効率の指標で、冷凍機の冷凍能力と圧縮動力の比で求められます。


しかし、上記の圧縮動力は理論上の値で、実際の圧縮動力は圧縮機が運転する際の摩擦や漏れなどによるロスがあるため、理論値よりも大きくなります。
そのため、問題文にあるように理論冷凍サイクルの成績係数よりも、実際の装置の成績係数のほうが小さくなります。
ニ.理論ヒートポンプサイクルでは、圧縮機で理論断熱圧縮動力を消費して、この圧縮動力に相当する熱と蒸発器で取り入れた熱とが冷媒に加わって凝縮負荷となり、凝縮器から放出される熱を利用する。
→正しい
冷凍サイクルにおいて冷媒の熱量が上昇するのは圧縮機と蒸発器を通過したときです。この熱量が放出されるのは凝縮器を通過するときなので問題文は正しいです。
- 蒸発器: 周囲の冷たい場所から熱を取り込むことで、冷媒の熱量を上昇させる。
- 圧縮機: 外部から電気などの仕事(動力)を加えて、冷媒を圧縮します。このとき、圧縮した仕事の分だけ、冷媒に熱が加わり、熱量を上昇させます。
- 凝縮器:圧縮機から送られてきた高温・高圧の冷媒は、凝縮器内で周囲の空気や水に熱を奪われることで熱量が減少します。なお、このとき冷媒が放出した熱は給湯や暖房などに利用できます。
